KAC MAGAZINE

実は難しい!腹腔内投与(パートⅡ)

コラム

二年ほど前「実は難しい!」と形容し、腹腔内投与に注目したコラムを書かせていただきました。
例えば経口ゾンデやカテーテルチューブを胃まで挿入することに苦戦する方はいると思いますが
「注射針を刺すことに苦戦する・・・」という方はいませんよね。
一方で、正確に投与できているか否かが即、かつ目視で判断できないことのリスクと恐怖!
このコラムがなかなか好評でしたので、この度パートⅡを書かせていただく運びとなりました。

 そもそも投与経路として腹腔内投与を選択しなければいけないのはどのような時なのでしょうか?
「消化経路を避けたい!(例:薬剤がタンパク質からできているので消化を受けてしまう)」
「薬効が早期に現れて欲しい!(例:麻酔投与)」
等々あるかと思います。腹腔内投与のメリットですよね。

そんな腹腔内投与ですが、「手技として実は難易度が高い」以外にデメリットはないのでしょうか?
(なければ今回のコラムは書いていないわけですが)
 腹腔内に針を刺すわけですから当然局部ダメージ大です。
一度腹腔投与すると腹腔内で炎症を起こし、2回目以降の投与時に腸管等を傷つける可能性が高くなるので、
回を増すごとに難易度はアップしていきます。腹膜炎、合併症にまで至れば大変なことです。

 人のがんの治療でも、抗がん剤を直接腹腔内に投与するi.p.(腹腔内投与)療法という治療方法がありますが、
腹膜刺激による腹痛、局所の炎症、腹膜の癒着に加え、薬の排泄が遅いことによる腎機能障害などのリスクや
デメリットについて理解した上で選択すべきだと言われています。

 動物福祉の観点からも、手技の精度向上に加え、投与前後の処置(無菌操作や投与後の観察)、
穿刺回数等への配慮を徹底していく必要がありますね。

以上、「実は難しい腹腔内投与(パートⅡ)」でした。

技術ソリューション部
技術研修グループリーダー
天野 真理子