BIOSCIENCE

疼痛試験

疼痛モデル

神経障害性疼痛モデル PSLモデル(マウス)
CCIモデル(マウス、ラット)
SNLモデル(ラット)
SNIモデル(マウス)
糖尿病誘発疼痛モデル STZ誘発糖尿病モデル(ラット)
抗がん剤誘発疼痛モデル Paclitaxel誘発末梢神経障害性疼痛モデル(ラット)
Oxaliplatin誘発末梢神経障害性疼痛モデル(ラット)
炎症性疼痛モデル CFAモデル(ラット)
変形性膝関節症モデル MIA誘発変形性膝関節症モデル(ラット)
半月板摘出モデル(ラット) 硝酸銀誘発モデル(ラット)
術後痛モデル 術後痛モデル(ラット)
内臓痛モデル Caerulein誘発膵炎痛モデル(マウス)
急性痛モデル ホルマリンテスト(マウス)

ホームページに記載のないモデルも随時立ち上げを行っておりますので、まずはお問い合わせください。​

CCIモデル(ラット)におけるPregabalinの薬効評価

MIAモデル(ラット)におけるDynamic weight bearing test

MIAモデルにおける処置後肢荷重比率の経時的な変化
MIAモデル(ラット)におけるDiclofenacの薬効評価

疼痛に関する概説

痛みは原因的な分類、時期的な分類(急性痛、慢性痛)、発症する部位等により分類されています。一般的には以下のように分類されています。臨床では様々な要因が重なり疼痛が発症する混合痛が多いです。
動物の病態モデルを選択する際には、目的とする疾患の病態モデルがあるか、急性痛か慢性痛か、痛みの種類、鎮痛薬のターゲットや投薬時期を考慮し、プロトコルを作成します。

行動評価方法の概説

痛みは主観的な症状であり、動物は「痛い」と話すことができません。そのため動物を用いた鎮痛薬を評価するためには動物の「疼痛関連行動」を観察し評価を行います。各病態モデルで出現する痛みの種類が異なるため病態モデルにあわせて行動評価を選択します。行動評価は測定者の主観が結果に影響しやすいので測定はブラインドで行うなどの工夫が必要です。また、動物が痛みに対して回避行動が取れるように実験条件を設定し、各測定にカットオフ値を設ける必要があります。

刺激を行う場合
刺激の種類 測定法
機械刺激 von Frey test
冷刺激 Acetone test
温熱刺激 Hot plate test
Plantar test
刺激を行わない場合
刺激無し 測定法
静止時の荷重比率(静止時痛) Weight bearing test
運動時の荷重比率(運動時痛) Dynamic weight bearing test
その他 歩行異常などの行動観察

病態モデルの解説

代表的な神経絞扼モデル
モデル名 評価方法
Partial sciatic nerve ligation
(PSL, Seltzer)モデル
von Frey test
Chronic constriction injury
(CCI)モデル
von Frey test
Spinal Nerve Ligation
(SNL, Chung)モデル
von Frey test

神経を絞扼(または結紮)するモデルは、使用する糸の材質、大きさ、処置を行う位置、力加減がモデルの発症に影響します。このため、実験者は常に一定の基準で処置を行う必要があります。発症が弱いと痛みが続かず、発症が強すぎると薬効が弱くなる場合があるためモデルの発症を一定にする工夫が必要です。各モデルによって安定したアロディニアの発症時期が異なります。弊社では陽性対照薬として主にPregabalinを用いています。

抗がん剤による末梢神経障害性疼痛モデル
モデル名 評価方法
Paclitaxel
誘発末梢神経障害性
疼痛モデル
von Frey test

臨床では約60~80%の患者で末梢神経障害症状が出現します。症状の強さは総投与量や投与期間などに依存します。臨床での神経症状はしびれや痛みが出現しますが、動物実験ではしびれと痛みを分けて評価することは難しく、弊社ではvon Frey testを用いて測定を行うことが多いです。弊社では陽性対照薬として主にPregabalinを用いています。

モデル名 評価方法
Oxaliplatin
誘発神経障害性疼痛モデル
Acetone test

臨床ではOxaliplatinの末梢神経障害は急性症状と慢性症状に分類されます。急性期の症状としては、Oxaliplatin処置数日以内に、ほぼ100%の患者でcoldアロディニアが発症すると言われています。その後Oxaliplatin処置を繰り返すことにより慢性の神経障害(しびれ、感覚鈍磨)が高頻度に出現すると言われています。
Cold アロディニアの評価方法としてacetone test、tail immersion test、cold plate test等のいくつかの評価方法が行われていますが、弊社ではacetone testを採用しています。動物のcold allodyniaはささやかな反応であり、実験者が感知することは難しいです。
臨床ではOxaliplatin処置後すぐにcoldアロディニアが出現しますが、ラットやマウスにOxaliplatin処置を行う場合、疼痛関連行動がすぐに出現しないため(または実験者が感知できないため)、複数回Oxaliplain処置を行う文献が多い。弊社では陽性対照薬として主にDuloxetineを用いています。

モデル名 評価方法
Streptozotocin(STZ)
誘発糖尿病性疼痛モデル
血糖値測定
von Frey test

ラットにStreptozotocinを投与し、糖尿病を誘発します。系統差が非常に大きいモデルです。弊社の投与条件の場合、STZ投与後にほぼ100%の個体で高血糖となります。一方アロディニアを発症する個体は100%ではありません。尿量が多くなるため行動評価時に影響がでないように配慮が必要です。弊社では陽性対照薬として主にPregabalinを用いています。

変形性膝関節症モデル(OAモデル)
モデル名 評価方法
モノヨード酢酸(MIA)モデル Weight bearing test
Dynamic weight bearing test
補足としてvon Frey test

関節腔内にMIAを投与しモデル作製を行います。関節腔内に投与できているか実験者からは目で見えないため、MIA投与時に確実に投与できるように工夫が必要です。MIA投与1~3日後に急性痛が出現し、その後MIAの投与量により差があるが、投与3週間~4週間後に慢性痛が出現します。
陽性対象薬は急性期にはNSAIDsやモルヒネ、慢性期にはモルヒネを用いています。
静止時痛はstatic weight bearing test、運動時痛はDynamic weight bearing testを用いて測定を行います。Static weight bearing testは、測定ケージ内での動物の姿勢や顔の位置により、両足への荷重のかかり方が変わってしまいます。このため動物の測定への馴化が重要となります。
Dynamic weight bearing testは機械で測定するため上記のように馴化に配慮する必要はありません。ただし動物が測定装置に馴れると歩かなくなってしまう場合があるため、測定は間隔を空けて行う必要があります。

モデル名 評価方法
半月板摘出モデル Dynamic weight bearing test
補足としてvon Frey test

MIAモデルが化学物質を投与し疼痛を惹起するのに対し、半月板を摘出することにより疼痛を惹起するモデルであり、より臨床の病態に近いと言われています。ただしラットの関節が小さいため手術が難しいモデルです。小さい視野での手術となるため、手術時に他の組織を傷つけないように処置を行う必要があります。
MIAモデルよりも緩やかな痛みが一定続きます。