KAC MAGAZINE

脳脊髄液(CSF)を用いた中枢神経作動薬のバイオマーカー評価

試験事例

中枢神経系に作用する薬剤が脳内で作用していることをバイオマーカーの変動によって確認する試験は、中枢神経系に作用する薬剤開発において、成功確度を高めるための重要な試験となります。その試験のひとつに薬剤投与後に脳脊髄液(CSF)を採取し、CSF中の生体内分子(バイオマーカー)の変動を捉える試験があります。
ドパミンD1受容体は線条体に多く存在するGタンパク質共役型受容体です。受容体に刺激が入ると細胞内にてcAMP(cyclic adenosine 3′,5′-monophosphate)が増加し、プロテインキナーゼA(PKA)を活性化させます。活性化されたPKAは様々な下流の標的タンパクをリン酸化し、遺伝子発現の変化などを誘発します。
我々は、ドパミンD1受容体作動薬の脳内作用性を、CSF中のcAMPの変化で評価しました。ドパミンD1受容体作動薬であるSKF-82958をラットに皮下投与し、投与後2時間においてイソフルラン吸入麻酔下でCSFを採取しました。ELISAを用いてcAMPを定量したところ、溶媒投与群よりも有意に増加していることが明らかとなりました。さらに、SKF-82958が脳内で作用していること確認するために、CSF採取後に直ちに線条体を採取し、qPCRにてc-fos mRNAの発現を確認しました。線条体内c-fos mRNAは溶媒投与群と比較してSFK-82958投与群で有意に増加しており、線条体内ドパミン神経系が活性化されていることが示されました。

◆ 使用動物
動物:SDラット ♂ 8週齢

◆ 処置物質
被験物質溶媒:10 %DMSO含有20% Sulfobutylether-β-cyclodextrin
被験物質:SKF-82958(ドパミンD1受容体作動薬)

◆結果
(A)                    (B)
   
A:SKF-82958によるラットCSF中cAMPの変化.  B:SKF-82958によるラット線条体内c-fos mRNAの発現. 
平均 ± 標準偏差. かっこ内例数. ***p<0.001 vs vehicle-treated group (Student’s t-test).

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