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動物実験委員会ってなあに?
前回の技術サービスグループコラムでは「動物実験委員会業務 受託サービス」の紹介を行いました。
しかし!この業界にいる方でも「名前は知っているけど、中身はいまいちわからない」「何を行うの?」と感じている方はきっと多いでしょう。この業界ではない方だと尚更かもしれません。では、動物実験委員会とはいったいどのようなものなのでしょうか?
動物実験委員会は、「動物の愛護及び管理に関する法律(以下、動愛法)」の下において策定された「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(文部科学省基本指針)」や「厚生労働省の所管する実施機関における動物実験等の実施に関する基本指針」、「農林水産省の所管する研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」においてその設置が義務付けられています(以下、基本指針)。また、その詳細を示したガイドライン「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン(日本学術会議)」では実際の方法について記載されています。
これら基本指針の中には「動物実験等を実施する際の実験動物の飼養及び保管は、法及び飼養保管基準を踏まえ、科学的観点及び動物の愛護の観点から適切に実施すること」といった記載もあります。この「飼養保管基準」は正しくは「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(環境省)」と言い、これをより詳細に解説した「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の解説書(環境省)」が公表されています。
以上の法令、基本指針及び飼養保管基準に従って、たくさんある施設それぞれに機関内規程(施設ごとのルールですね)が定められています。
そうして策定された機関内規程等のルールをしっかりと守ることにより、「実験動物の適正な飼養及び保管並びに科学上の利用」も達成することができます。
これらを確実に遵守できるように活動しているのが、各機関に設置された「動物実験委員会」というわけです。
上図に示したように、動物実験委員会には多くの役割がありますが、特にわかりやすくなじみ深い活動が、各機関において実験計画が立案されるときの審査活動です。
これは、立案された試験計画書が機関内規程(ひいては基本指針や飼養保管基準)に則り作成されているか?使用する動物の数や代替法の有無、実験方法の妥当性はどうか?動物の苦痛はできるだけ軽減されているか?人道的なエンドポイントは設定されているか?等を慎重に審査し、試験実施の可否を判断します。使用する麻酔の種類等も当然審査の対象となり、その全てが妥当性の高いものでないと試験計画書は承認されません。つまり、試験の実施すらできない事になります。
これにより適正な動物実験を行うことで、信頼性の高いデータを得ることができると同時に動物福祉(3Rs)の向上にもつながります。
このように聞くと、動物実験の審査がいかに重要なものであるかがわかると思います。
動愛法第41条にあるような代替法の検討、飼養動物数の削減、できる限り苦痛を与えない手段をより適正に実施するために「機関内規程があるから大丈夫だろう」と考えるのではなく改めて様々な立場の人に審査をしてもらって作り上げていくというように理解すると良いと思います。
「無いとダメみたいだから設置する」「要ると言われたから設置する」ではなくて、「動物実験委員会は科学の発展と、動物の福祉のために存在してしかるべきであるもの」という事ですね。
委員会の構成員や自己点検のお話等、実はまだまだ伝えたいことはたくさんありますが、どんどん気楽に読めない量となってしまいますので、本日はこれにて。
参考
・動物の愛護及び管理に関する法律 環境省
・実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準 環境省
・実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の解説 環境省
・研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針 文部科学省
・厚生労働省の所管する実施機関における動物実験等の実施に関する基本指針 厚生労働省
・農林水産省の所管する研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針 農林水産省
・動物実験の適正な実施に向けたガイドライン 日本学術会議
技術推進部 技術サービスグループ
アシスタントマネージャー 奥田 宏平