KAC MAGAZINE

個性に合わせた指導とは?  第一弾:一人になりたい?付いていて欲しい? 編

コラム

「 知識・技術の継承 」…未来を担う重要ミッションとしてこれを掲げている業界は多いと思いますが、実験動物業界も例外ではありません。そして、知識・技術の継承に欠かせないと言えば教育研修です。今回はここから、「個性に合わせた指導」をテーマとして、改めて考えてみたいと思います。第一弾は、「 一人になりたい?付いていて欲しい? 」です。

未経験の技術をレクチャーする受講生には、まずは一から説明したり、デモンストレーションを見せたりします。より丁寧に、受講生の理解度を伺い見ながら。ある程度理解してもらえたことを確認し、「 では、実際にトライしてみましょうか。 」という段階へ。

受講生の皆さんのトライ&エラーをじっくり観察しながら、「 何が原因で上手くいかないのか一緒に考えていきましょう。 」 「 ここをこうしてみましょうか。 」という過程を経て、ある程度形になっていきます(受講生の方々が一番嬉しそうな表情をされるのがこの頃でしょうか)。この頃までは常に受講生の方に付き添うことがほとんどです。「 動物に苦痛がないように 」、「 受講生の安全衛生のため 」、加えて、「 受講生がそれを望んでいるから 」・・・多くの講師の方が自然とそうされているものと思います。

ある程度形になり、習得から修得を目指す段階、繰り返すことで精度向上を目指す段階になると、「 どこまで付き添うのか? 」について講師のスタンスが分かれてくるのではないでしょうか?私は四六時中付き添うことはせず、受講生一人で繰り返させる時間をあえて大切にしています( 何かあればすぐ駆け付けられる距離感にいますので念のため )。理由は二つ、「 実は受講生は、自ら試行錯誤する時間を欲しがっている。 」、「 受身で得たコツも貴重ではあるが、自ら気が付いたコツは定着レベルがより高い。 」です。昔は、常に寄り添うことこそ受講生への愛だと思っていましたが、良かれと思って四六時中一挙一動を見守り続けることは、かえって受講生のためにならない・・・そう感じているここ数年です。

となると次に考えるべくは、「 今は一人で試行錯誤させて欲しい。 」という時間と、「 今は付き添って欲しい。 」という時間のバランスが受講生それぞれで異なるということ、更に言えば、求める上記バランスが言動や表情に表れる受講生もいれば、微妙なシグナルをこちらがキャッチしてくれるのを待っている受講生もいる、ということです。講師にとって、受講生が求めるこのバランスを敏感に察する能力は非常に重要であり、今後も多くの受講生と接しながら私自身そのアンテナを磨いていきたいと思います。