KAC MAGAZINE

動物実験を取り巻く環境

コラム

2005年の動愛法改正以降、我が国においては動物実験および動物取扱いに係わる環境が大きく変化しました。                           3Rs、動物の安寧、苦痛の軽減、動物実験委員会の機能、獣医学的管理等、様々な考え方から動物実験・実験動物の在り方が見直され続けています。     これらの変化は飼育管理者の業務内容に大きく影響を与え、法令や機関内規定を守ることだけでなく、一人ひとりが「適正な動物実験について考える力」を求められる時代になっています。

しかし、いまなお我が国の動物実験・実験動物の考え方は欧米に比べるとかなりの差があるのが実情です。

米国を例にとりますと、動物の観察やケージの使用状況、飼料在庫等において専用のシステムを用いた、いわゆるペーパーレス化/オートメーション化が進んでいます。また、AI機能を利用して、データを集積しケージ内環境を把握することで最適な餌・水・床敷きの交換時期を飼育管理担当者に知らせることが可能な状況にあり、飼育管理において今後より一層のオートメーション化が進むものと考えられます。

我が国ではアレルギー対策、高湿度・重労働の対策としてオートメーション化が進み、既に洗浄室で床敷き回収から洗浄、乾燥、床敷充填まで一手に行える様な洗浄ロボットを導入している施設もありますが、これらはあくまでも労働安全衛生や省力化の意味合いが強く、「動物」に対しての対応としてはまだまだと言うほかありません。ただ我が国においても近い将来飼育管理業務において、日常での機器装置およびシステムの管理、さらに保守点検を行うこと等、従来の飼育管理業務とは毛色の違う作業も定型業務としてどんどん盛り込まれていくことは確実であろうと推察されます。

一方で、オートメーション化が全てを簡単・便利にするわけではなく、当然機器の故障や停電などの際、業務に支障をきたさない対応ができる高い適応力が飼育管理担当者に要求されます。

すなわちシステム・機械に使われるのではなく、これらを使いこなせる人材が望まれます。機械に出来ない事を人の手で補い、さらに高いレベルの飼育管理業務を実践していくこと、環境の変化をしっかり見据え、日頃から自らの持ちうる技術をRefinementしていくことが、これからの飼育管理担当者に求められる要件なのではないでしょうか?

顧問・コンサルタント 藤本 芳勝