KAC MAGAZINE

実技指導における説明力

コラム

「知識・技術の継承」…未来を担う重要ミッションとしてこれを掲げている業界は多いと思いますが、実験動物業界も例外ではありません。
そして、知識・技術の継承に欠かせないと言えば教育研修です。

前回コラムと同様の導入にて申し訳ございません。

前回はここから、「実験動物関連eラーニング教材の有用性」について、特に動物福祉の側面からお話させてもらいました。

今回は、継承していく上で必要な 《説明力》 について、 「言葉の引き出し」 って大切ですよね』 というお話についてです。

「文書やマニュアル等」 で伝えていくことも増えてきた昨今の技術継承ですが (確かに効率的ではあります) 、微妙なところが問われる匠の技であればあるほど、文書やマニュアルでは解決できなくなっていきます。
動物実験手技の継承においてもそのような場面は数多くあり、実地研修はやはりゼロにはできません。そして、いざ実地研修となると講師陣は 「これをどう言葉に表したらいいのか?」 「この感触はどうしたら分かってもらえるのか?」 等、伝えることに奮闘します。様々な力加減や感触が数値化できれば良いのですが、そのようなわけにもいきません。
よくお芝居の演出家が、演出に必要な力の一つとして説明力を挙げるのですが、この業界の技術指導も説明力!そして、説明力を左右するのは言葉の引き出し (引き出しの数&相手に合わせた引き出しの使い分け) だと思います。 「伝わった経験」 「伝わらなかった経験」 を繰り返し、魅力的な指導者を模倣していくことで使える引き出しを増やそうと、講師の皆さんは必死なのではないでしょうか。僭越ながらここで、私が経験した 「あ、伝わった」 と感じた事例について以下ご紹介させていただきます。 (どのような場面で使用したのか?あまり具体的な記載ができないため参考になりづらいかと思いますが、その点ご容赦をお願いいたします)

まず、何かモノに例えて説明をするパターンがあります。例えば、マウスを優しく包み込むように保定したい場合は 「卵をフワッと包み込むように」 、外皮に注射針を刺入する感覚を伝えたい場合は 「ソーセジの皮をプツッといく感じで」 というような感じです。

続いて、実際に触らせてもらうパターンもあります。例えば、マウスの尾の血流を促進させたい場合、実際に相手の手の甲などを触らせてもらいながら、 「これくらいの弱い力で血管をしごいてください。」 と説明しますし、保定の力加減を伝えたい場合も、やはり相手の手の皮膚などを摘まませてもらいながら、 「これくらいの力で皮膚を摘まんでください。」 と説明します。 (注意:直接研修生に触れますので相手のコンセンサスが必須です)

最後に、擬音語で伝えるパターンです。例えば、注射針が血管に入った場合の感覚を 「スーッと針が進む感じ」 と表現したり、相手に伝わりやすそうなオノマトペを駆使します。

研修生の方々の深刻な悩みが、ちょっとした言葉の工夫一つで嘘のように解消される場面を少なからず見てきました。今後も言葉の引き出しを増やし、それらを駆使しながら研修生の方々と共に奮闘していきたいと思います。