KAC MAGAZINE

実験動物飼育施設の建設とコストのはなし

コラム

今回のコラムは、実験動物飼育施設の建設を考える上で皆さんがよく気にされる 『 コスト 』 について少し触れてみたいと思います。

新しく実験動物飼育施設を建てるとき皆さんが気にされる  『 コスト 』 というのは、その施設を建てる際に必要な建築費や付帯工事費、設備費といった 《 イニシャルコスト 》 とその施設の維持や運営に毎年必要となる諸経費 《 ランニングコスト 》 の二つだと思います。
イニシャルコストの総額は、その施設の規模や構造 ( 鉄筋コンクリート造や鉄骨造など ) や、建設予定地の状況 ( 既存の建屋の解体や地盤改良が必要など ) といった様々な要因によって大きく変わりますが、1000平米程の施設を一から建設した場合、本体工事費だけでおよそ数億円、付帯工事費や設備費を含めると数億円~十数億円程の費用が発生します。では、ランニングコストについてはどうでしょうか。
ランニングコストには、水道光熱費、施設や設備の保守にかかる点検・整備費、消耗品費 ( 消耗部品や飼料、床敷など ) 、飼育管理にかかる人件費などがあります。こられは施設の規模に比例して大きくなり、施設を稼働させている間継続的に発生します。その額は年間でおよそ数千万円~数億円規模に上ります。

如何でしょう。どちらも容易に捻出できる金額とは言えませんね。これらのコストを考えるとレンタルラボや試験の外部委託という選択は自然な流れではないかと思います。現に弊社でも毎年多くの試験を受託しておりますし、レンタルラボも提供しております。
とはいえ既存施設の老朽化や研究の拡大といった理由から新しい動物施設が必要になるケースもあります。この場合、限られた予算の中で最適な研究環境を確保することが求められるでしょう。実験動物飼育施設のコストが将来の負担とならない為にも計画段階から 《 イニシャルコスト 》 と 《 ランニングコスト 》 の2つを念頭に置いた事前準備をする必要があります。

ここで、施設の建設において重要な事前準備の一つ 「 施設利用者への事前ヒアリング 」 について少し触れたいと思います。

施設利用者への事前ヒアリングとは、 《 いつ、どの様な方法・規模・頻度で動物実験を行い、それに必要な設備は何か 》 といった項目について過去のデータと今後の予想を事前に調査し、建設する施設の規模やそこに必要な設備を割出す作業です。ここで収集した情報に不備があると、必要以上の施設を建ててしまったり ( コストの増化 ) 、逆に必要数を満たさず研究に大きな遅れを生む可能性があります。
コストの無駄を省く為には、ここで集められた情報から組織が持つ特徴  《 特定の期間に試験が集中する、短期試験が多い、全体使用数のうちマウスが9割以上など 》 を正しく把握し、組織にとって適正な施設の最大収容数を導き出すことが重要となるのです。
因みに、事前ヒアリングの結果、月別の予想飼育数がはじき出される訳ですが、最大予想飼育数 = ( イコール ) 施設の最大収容数として採用するのは少し待って下さい。これも一つの考え方ではありますが、最大数と最小数の開きが大きすぎたり、最小数の期間が年間の殆どを締めるといった場合には、無駄の多い施設となってしまいます。試験実施時期の調整や飼育数削減の可能性を探り、運用の効率化を図ることも事前ヒアリングを行うの意味の一つです。

「 施設利用者への事前ヒアリング 」 以外にも準備の中でコストを左右するポイントはいくつか存在します。その中には、効率的に収容ができる試験目的合った飼育ラックの選定であったり、空調効率・作業性・各種法令などを考慮した間取りの検討など、動物や試験に関する知識と経験が必要になる場面も多くあります。動物飼育施設の建設をご検討される際は是非一度、弊社にご相談下さい。経験豊富なアドバイザーによる適切なアドバイスをご提供させていただきます。

技術推進部 技術サービスグループ
アシスタントマネージャー 紺屋 好美