KAC MAGAZINE

社内コンサルとしての話題;コンサルティング?コンサルテーション?

コラム

本コラムの起稿に当たって、「コンサルの話題を」とのことですので、よくある展開として言葉の定義から入っていきます。

表題のような「コンサル」という略語は、一般には「助言する」というイメージで汎用されていますが、
そのもともとのコンサルトとは、英語の「consult」から来ており、
これは➡「意見を聞く、助言を求める、かかる、診察してもらう、調べる、(…を)顧慮する、考慮に入れる」という動詞で、
ラテン語 consulo(助言を求める)⇒ con-(一緒に)+sel-(取る)が語源です。
「助言を求めること」がこの単語のコアの語源となり、counsel(助言する)と同じ語源をもちます。
ですので、関連語には、consultant(顧問)、consultative(相談の)、counsel(助言する)、
counseling(カウンセリング)、counselor(助言者)などがあります。
この「consult」から派生した言葉として動名詞のconsulting(コンサルティング)と、
名詞のconsultation(コンサルテーション)があります。

表題のような「コンサル」という略語の語源が、コンサルティングなのか、コンサルテーションなのか解釈は結構テキトーなんじゃないかなと、
今回調べ始めてから気が付きました。自分も個人的には分かっていませんでした(汗!)。
Yahoo知恵袋でも、ベストアンサーは「名詞と動詞の違いでしかない」とありましたが。
今回はここをノリ突っ込みしたいと思います♪

実はこの両者は次のような定義づけがされています。
「コンサルティング」とは、「クライアントが抱える問題に対して、特定の分野における専門的知識や経験を基に解決策を提示し、
問題の解決を手伝う業務」を意味する言葉です。
ちなみに、コンサルティング業務を行う人のことは「コンサルタント」と呼びます。実はコンサルティング (英: consulting) とは、
元々、企業(まれに行政など公共機関)などの役員(特に経営者が多い)に解決策・方針を示し、企業の発展を助ける戦略提案の業務を指していましたが、
近年ではコンサルティングが大衆化して、戦略提案よりも実行支援に比重が移っているようです。

「コンサルテーション」とは、「援助が必要な人に対して、異なる専門性を持つ人たちがより効果的な援助活動を行うこと」を意味する言葉です。
「コンサルテーション」(=他の専門家からの支援)を受ける側の専門家のことを「コンサルティ」、「コンサルテーション」(=他の専門家への支援)を行う側の
専門家のことを「コンサルタント」と呼びます。
例として、悩みを持つ子供(=援助が必要な人)に対し、教師とスクールカウンセラーが連携して援助活動に取り組んでいたとします。
この場合、子供に直接的に援助活動を行う教師が「コンサルティ」です。
そして、教師へアドバイスなどを行い、間接的に援助活動を行うスクールカウンセラーは「コンサルタント」になります。

現在、私はKACアドバイザーとして社内外の依頼者に対してコンサル業務を承っていますが、
その内容は端的に言えば上記の「コンサルティング」に当たると考えられます。
研究や飼育管理等の実務に当たって生じた課題・疑問点に対して、実験動物学・獣医学や創薬研究に関わった専門知識や経験の中から、
解決に繋がる情報を提供し、必要に応じて技術支援や指導を行います。
簡単に知識・情報の提供や技術支援で終わればそれはそれで終わりです。
しかし、依頼者のお話をうかがって現場のニーズに応じたサービスを意識していくと、
業務は「コンサルティング」から「コンサルテーション」に移っていくことが多いようなことを実感しています。

よく知られているように、実験動物飼育や動物実験の領域は多くの専門科学分野の知識・技術の集合体であり、
依頼者の方の事情を深く理解するにつれて、自分よりも専門性の高い専門家の助力が必要な課題も見えてきます。
例えばマウスなど飼育動物に発生する外傷や下痢などの健康問題の解決を考えると、
飼育環境や同居動物との関係性、施設の運用や、実験供試の状況などを具体的に認識され、
隠れた新たな課題が表出してくるのが良い例だと思います。
そのような課題の解決には、私のような獣医師だけでなく、依頼者の方も当然上記の「コンサルティ;(=他の専門家からの支援)を受ける側の専門家」として
飼育担当者、実験支援者あるいは研究者として関わっていただければ、満足いただける「コンサルテーション」が達成できるものと考えています。

コンサルタントとして課題を評価するには、毎日の動物飼育を通じて一番近くで動物を見ている飼育担当者の現状認識や経験が絶対必要ですし、
普段の動物実験操作・データ評価を通じて、動物使用と研究精度のバランスを実感している実験支援者・研究者の見識も頼りとしています。
さらに、このような専門者間のコミュニケーションを通じて社内コンサルを依頼する方の専門性の成長にも繋がれば、
社内外の技術者の成長を下支えする技術研修グループ員としてありがたいと思います。

コミュニケーションを通じた円滑な課題解決にKACアドバイザーを今後も活用していただければ幸いです。

技術ソリューション部 技術研修グループ 馬場淳